Healing Sleeper
―
認めたら、終わる。
だから目を逸らしていた。
出れないようにと、
この手の中に押し込めて。
「イザーク?どうかしたのか?」
窓際で外を眺めていたアスランは、コーヒーを片手に
どこか空ろな目をしたイザークに気付いて声をかけた。
「…いや、何でも」
すぐにいつもの整淡な顔に戻って笑いかける。
自分らしくない。
落ち着こうと入れたてのコーヒーを口に運ぶと、
「…ッ…!」
思ったよりコーヒーは熱くて舌に鋭い痛みが走った。
「イザーク!!大丈夫か??」
慌てた様子でイザークに駆け寄り、心配顔で覗き込んでくる。
何の邪念も無く、自分の口元に視線をそそいでいる顔は
何時見てもまだあどけなくて。
軽く痺れた舌を出して指で触っていると、
アスランが冷蔵庫から氷を持ってきた。
「イザーク、これ口に入れて…」
「…入れてくれよ」
少し意味深に言うと戸惑ったように持った氷を口元に持ってくる。
「違う。そうじゃない」
「…え…?」
戸惑ったアスランの唇に指先を乗せて、
「ここで、入れろと言ってる」
柔らかく微笑んでやる。
多分彼が一番好きな自分の顔。
色々と心得た、この数日の間に。
彼がどうしたら喜ぶか。
どういったら俯いて顔を赤らめるのか。
どんな顔をしたら
この手の中に納まるのか。
「イザーク…ッ、だから早く氷を…」
困った様子で溶け出した氷を持つアスランに
催促する様に軽く舌を出して瞼眼を細める。
「……っ」
しばらくそのまま見つめると、アスランは
面白い程頬を赤く染めながらもしぶしぶその氷を口に含んだ。
すっと顔を近づけると、驚いた顔をして身体を引く。
「早くくれよ?それ」
甘く囁いてねだる様にアスランの首に腕を回すと、
そのまま唇を重ねた。
「…ん…」
拍子に目を閉じたアスランがビクっとしてから、
そっと唇を開けて舌で氷を押し出してきて。
冷たい感触に紛れた柔らかいアスランの舌も味わう。
「ん…ぅ…、んんっ…」
肩を押しやられて唇を離すと、
真っ赤な顔をしながら睨む様な視線を向けられる。
綺麗に潤んだ翡翠の瞳。
初めて会った時に予感した事があった。
機体に乗っている時は悔しい程に仕事をこなして。
なのに、Gから降りた後見せるどこか生気のない瞳。
諦めにも似た憂いの表情。
自分の中の直感が言った。
コイツは危険だ、と。
それはやはり当たっていて。
だから。
どうしても彼を手に入れたかった。
事実、今はきっと限りなく手に入っているに近いかもしれない。
「アスラン」
俯いている手を引き寄せて抱き締める。
「…やけどは…?もう痛まないのか?」
大人しく抱き締められたまま呟かれた声は少し掠れ気味で。
「あぁ、氷のおかげで…いやお前のおかげで、な」
こんな陳腐な台詞にすら彼は甘く反応する。
。。。。。。。
この苛立ちはなんだ。
「どうせならその口で此処もしてくれ」
言いながらアスランの手を自分のそこに導いて首筋に噛み付く。
「あっ…、やだ…っ」
すぐに手を引こうとするのを押さえ込み、
自分もアスランの下半身を布越しに撫でる。
「へぇ…嫌? これが?」
「ぁっ…!…っ」
激しく唇を重ねながらすでに大きく反応しているそこを強めに握ってやる。
ギュっと目を閉じてイザークの肩に顔を埋めたアスランが小さく言った。
「やめ…っ…、っ…イザ…ク…」
漏れたその涙声はとても甘かった。
苛々する。
「んっ…ぅ…、はぁ…っ」
濡れた音をたててアスランの舌が其処に絡む。
わざと力を入れて自身を立たせ、顔に擦り付けるようにすると、
逃げるようにしながらも先端を舐めようと舌を覗かせる。
「もっと奥までしてくれよ。…それとも後ろで欲しいか?」
そう言って奉仕する顔を見下ろしながら微笑む。
「っ…、ちが…っ」
「俺は欲しい」
ツゥ、と後ろの窪みに自分で舐めた指を潜らせた。
「やっ…!あ…っ、あ…、」
急速に奥を広げようとかき回すと涙目で腰を揺らすアスランが
口を止めて喘ぐ。
「今すぐ欲しい…」
「…んなっ…事…、あっ…」
指を引き抜いてから高潮した顔を見つめる。
どうしても。
「欲しいんだろ?…アスラン」
この手で握りつぶしたかった。
「…ッ…」
自分より勝っている彼に、
せめて何か勝っていたかった。
「ほら…もう奥まで入った」
例えそれが、こんなふざけた行為の積み重ねだろうと。
この手の中で潰す為だったら何てことはない。
「…っあ…、…ぅん…っ、苦し…っ」
だから。
「好きだ…、アスラン…」
出来る限りの愛の言葉をくれてやったんだ。
戦闘以外はどうでもいいようなアスランを手に入れるのに
時間はさほどいらなかった。
「はっ…イザ…ク、…あっ…」
手を震わせながら律動を受け入れているアスランの好きな箇所を突く。
「んあっ…!!っ…やっ…ぁ…、もう…っやめ…」
すぐに足を持ち上げて奥まで一気に貫いた。
間で擦られて反応するアスランのそれを感じながら
腰を激しく揺すっていく。
「フッ…、アスラン、もうイキそうだな」
「ぁっ…、ダ…ダメッ…っ、イザ…っ…ん…!」
反り返ったそれを根元から急速に握り、中を大きく突き上げ、
同時に果てた2人はやがて静かにベットに沈んでいった。
静かな寝息を立てる横顔を眺めていると確かに安らぐ。
でも。
愛を囁いても、どんなに彼を抱いても
胸の苛々は増していく一方で。
いつか壊してしまうかもしれない。
俺は…何がしたいんだろう。
この安らかに眠る横顔を手に入れることで自尊心を保って。
それで。
手に入れたら不安も消えるはずだった。
こいつを手元に置いて、自分はGのエースを守るんだ、と。
その為にしてきたのに。
今手酷く捨てたらきっと彼はたやすく壊れる。
でも。
出来ない。
それが出来ない。
― 惨めだ。
そうでしか彼に勝れないなんて。
だから。
こんなに苛立って仕方ないのだろうか。
そういう事にして、今は眠る事にしよう。
壊したい思いと、愛しみたい思い、2つを捧げた、
君の寝顔に癒されながら。
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